茅乃舎特注 脚付きデザートボウル

WASHIZUKA GLASS STUDIO鷲塚貴紀作
 いつからか、デザートの時間を持つ機会はぐんと減ってしまったような気がする。忙しさのせいか、昔より甘いものを控えるようになったせいか。 甘いものを口にふくむ、幸せな午後のひととき、もしくは食事の後のゆっくりとした時間。栄養のために必須ではないけれど、人生をほんのり彩ってくれるような。
 そんな時間にふさわしい特別なガラス器が、富山から届いた。鷲塚さんの『脚付きデザートボウル』。 鷲塚さんのガラスシリーズは全て1つ1つ自らでつくっているものだが、今回はとくべつに茅乃舎のために、新しい形でつくっていただいた。 ボウルは精巧な弧を描き、手に持つとその薄さに反比例してしっかりと硬い。透明な美しさは、アンティークのようなニュアンスがある。
 富山のガラス職人である鷲塚貴紀さんは、自らの工房で、マウスブロー(吹きガラス)で1点ずつくっている。 美しいガラスの曲面や均一な厚みは、ガラス工芸の歴史が古いイギリスで三年半、専門的にガラス造形を学んだことによる技術に支えられている。 その真骨頂は、優雅な脚にある。ベネチアンガラスなどのステム(脚)のパーツを鷲塚さんなりに取り入れつつ、日本の食卓に合うよう、装飾過多にならないように気を配った。
「自分の暮らしにあう、心地よいものをつくりたい」そんな気持ちで素直につくっている、と鷲塚さんは言う。
 そのせいなのだろうか、手に取ると、まだ幼かったころ、夏の日ざしの縁側で汗をかきつつアイスを食べたような、やわらかな記憶がよみがえってくる。 親しみやすい形だから、スイカや葡萄などのフルーツを入れたり、夏にはかき氷にもぴったり。 スプーンがガラスに当たったとき、コン、という深い音が心地よいのも、鷲塚さんのガラスならでは。
 西洋の脚付きデザートカップは、平たいものも多いのだが、今回は茅乃舎のために、敢えて高さのあるボウルに仕上げていただいた。 そのため、和の食卓にもよくなじむ。胡麻豆腐やだしのジュレ、おひたしもきっと映えるだろう。 お料理好きな方なら、この脚付きボウルをどう生かすか考えるのも、楽しい時間になるかもしれない。
 最後に、このグラスを手にとった人にしか分からない秘密をひとつ。ステムの底に、実はほんのりと飴色が施されている。 あまりにさりげないこの色は、鷲塚さんが最後にバーナーで焼き付けているのだという。 「形をつくるまでのやわらかいガラスは、熱を帯びて色を持っているんです。 オレンジのような、黄色のような飴色で、それが冷めてくると普通の透明になっていく。 温度の高いガラスが醸し出す色みたいなものを、そのまま固められないかなと思いました」
 熱を持っていたときの記憶を、ひそかに隠し持つ、デザートボウル。 大人になったからこそ味わえる時間のために、ぜひ手に取ってみてほしい。

※この商品は『茅乃舎 西宮ガーデンズ店』のみでご案内予定です。

6月下旬発売予定/販売予定価格1脚 7,000円程度/個数限定販売

問い合わせ先:茅乃舎 西宮ガーデンズ店(0798-69-3033)